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【NST薬剤師が解説】NST専門療法士の取得手順から現場活用まで

・認定や専門資格を取るのってどれくらい大変なの?
・資格を取るのにお金はどのくらいかかるの?
・資格って転職や自分のキャリアUPにつながるの?

医療現場で働いていて、このような疑問を持つ方は多いと思います。

私自身、病院薬剤師の頃はNST担当の薬剤師として、チーム回診への参加はもちろん輸液や栄養の管理、そして処方提案などの業務を担ってきました。

今でこそ、Twitterやインスタで輸液・栄養分野を中心に情報を発信していますが、私がNST担当になってからすぐに前任者が退職されたため自分の力で知識を深めなければいけない環境に、当時はかなり苦労しました。

苦労した分、輸液・栄養の知識も身に付き、薬剤師6年目にNST専門療法士の資格を取得もすることができました。

そこで今回は、『NST薬剤師が解説|NST専門療法士の取得手順から現場活用まで』というテーマでお届けします。

認定・専門資格に興味のある方はもちろん、NSTってどんな資格?役に立つの?と疑問に思った方にも、資格取得から数年たった今だからこそお伝えできる内容になっていますのでぜひ最後までご覧ください。

目次

栄養の専門資格!NST専門療法士とは

NST(Nutrition Support Team)とは、栄養サポートチームのことで、NST専門療法士は「日本臨床栄養代謝学会(JSPEN)」が認定しています。

NST専門療法士とはどんな資格かというと

主として静脈栄養・経腸栄養を用いた臨床栄養学に関する優れた知識と技能を有しているとみなしNST専門療法士として認定するものである。

引用:https://www.jspen.or.jp/qualification/nst/protocol/

つまり、輸液・栄養分野において優れた知識と技能を持った専門家のことです。

資格取得にあたり、下記のいずれかの国家資格を持っている必要があります

・管理栄養士
・看護師
・薬剤師
・臨床検査技師
・言語聴覚士
・理学療法士
・作業療法士
・歯科衛生士
・診療放射線技師

このように管理栄養士、看護師、薬剤師に限らず、多くの国家資格を持った方が取ることができる資格です。

ちなみに医師は「認定医・指導医」、歯科医師は「認定歯科医」といった別の資格があります。

直近2年間のNST専門療法士の新規合格者数ですが、

・R4年度は444名(うち薬剤師は109名
・R5年度は751名(うち薬剤師は260名

と比較的多くの方が取得されています。

輸液・栄養スキルで貢献!NST専門療法士の仕事内容

対象患者のリストアップ

主治医や各病棟の看護師をはじめとするスタッフからの依頼を受けて、栄養障害の状態にある患者や栄養障害を生じるリスクの高い患者を抽出します。

対象患者の栄養評価実施計画の策定

身体情報、血液検査、栄養摂取状況(経口・経管・経静脈)などを把握して、対象患者の栄養評価および栄養管理計画の立案します。

NSTカンファレンス・回診

栄養管理に係る専門知識を持つ多職種(医師、看護師、薬剤師、および管理栄養士など)でチームを構成。

それぞれの専門領域の立場から改善案を出し、必要な対応を行うことで患者の治療に貢献します。

その他の活動

  • NST活動を定期的に振り返るミーティング
  • 院内スタッフや地域の医療従事者へ向けの勉強会を定期的に実施。(薬剤師は輸液・栄養分野の講義を主に担当)
  • NSTから院内スタッフへのお知らせ文書を作成。(薬剤師からは”輸液の投与速度”や“配合変化”などの注意すべき情報をお知らせ)

などがあります。

NST専門療法士の試験合格までの道のり!大事な”5つのポイント”を解説

「必要な国家資格」と「勤続年数」

認定対象となる国家資格(いずれか):

管理栄養士、看護師、薬剤師、臨床検査技師、言語聴覚士、理学療法士、作業療法士、歯科衛生士、診療放射線技師

勤続年数:

“5年以上” の医療・福祉施設に勤務し栄養サポートに関する業務経験が必要

つまり、勤続年数6年目になってはじめて試験を受けられます。

「学会への会員登録」と「年会費」

学会登録:

「日本臨床栄養代謝学会(JSPEN)」への会員登録が必要

会員継続期間が〇年必要というような条件はありませんので、受験申請時までに会員になって会費を納めればOKです。

年会費:

9,000円

(2019年は10,000円、2020年から9,000円とちょっと安くなりました)

「必要な単位数」と「単位の集め方」

必要な単位数:

日本臨床栄養代謝学会指定の学会やセミナーに参加で“合計30単位以上”が必要

集める単位の中で以下の2つは必須単位になります

①同学会主催の学術集会 (JSPEN) に1回以上の参加 (1回10単位)
②同学会主催の「NST専門療法士受験必須セミナー」に1回以上の参加 (1回10単位)

①×1+②×1=20単位を含める必要があります。

残る10単位の集め方は

これらの合計で30単位以上を集めることができます。

では、具体的に単位をどう集めればよいでしょうか?

「最短で集める方法」と「最も楽に集める方法」をそれぞれ紹介します。

❶ 最短で単位を集める方法

(例)
・日本臨床栄養代謝学会学術集会 (JSPEN)に1回参加(10単位)
・NST専門療法士受験必須セミナーに1回参加(10単位)
・日本臨床栄養代謝学会 NSTベーシックコース(5単位)
・日本臨床栄養代謝学会各支部の学術集会(5単位)

1年以内“合計30単位”を集めることが可能

❷ 最も楽に単位を集める方法

(例)
・日本臨床栄養代謝学会学術集会 (JSPEN)に2回参加(10単位×2)
・NST専門療法士受験必須セミナーに1回参加(10単位)

2年かかるが“合計30単位”最低限の労力で取得が可能

ちなみに、❶は私が実際に1年間で単位を集めた方法です。

短期集中で集めることができましたが、あわてて単位を集めた感じでした。
2年以上の余裕がある場合は❷の方法をおすすめします。

「認定教育施設での実地研修」

学会により認定を受けている教育施設で合計40時間の実地研修を受ける必要があります。

勤めている職場が研修施設でない場合は外部に研修を受けに行く必要があります。

1週間ほどの研修を受けるので職場に協力してもらうことがハードルのひとつです。

認定教育施設は、全国294施設(更新日:2023年7月12日)です。

研修の期間と費用の目安は以下の通りです。

研修期間:1週間前後 (例) 8時間×5日=計40時間
研修費:1~4万円
研修内容:回診、カンファレンスへの参加、症例検討、症例発表、講義など

各施設で多少異なりますので、詳しくは研修を希望される施設の募集条件で確認してください。

以前は実地研修を受けた場合は症例報告書の提出が必要でしたが、2022年12月1日以前の実地研修を受ける方から不要になりました。

自分が研修を受けた際は症例を提出していたので、これから研修を受ける方は試験までに症例を準備しなくて良いのは羨ましい限りです。

「認定試験とスケジュール」

これまで紹介した1~4のステップを満たして試験資格を得たら、いよいよ「NST専門療法士認定試験」です。

認定試験は例年10月の1~4週いずれかの日曜日にあります。

京都府の国立京都国際会館が試験会場です。遠方の方は大変ですね。

認定試験の申請受付は7月中で期限厳守なので、余裕をもって申込をしましょう。

具体例として、2023年度の試験スケジュールも一応紹介します。

日程:2023年10月22日(日)13:00~15:00
場所:国立京都国際会館
受験料:10,000円

詳細は学会HPを参照:NST専門療法士 2023年度認定試験に関する公告(第2報)

年に1回しか試験の機会はなく、京都まで行かないといけないので一発合格を目指しましょう。

合格すれば認定申請をすれば晴れてNST専門療法士です。

ちなみに、合格後の認定申請の登録料が20,000円かかります。合格したのにちょっと辛いですね。

試験対策

試験はマークシート形式で出題範囲は幅広いです。(70問くらいだったと思います)

勉強していなくても、臨床現場で関わっていれば解ける問題も多いです。

私が実際に試験対策で活用していた書籍は3つです。

①静脈経腸栄養テキストブック

②過去問題集Ⅰ


③NST専門療法士受験必須セミナーテキスト
必須単位である「NST専門療法士受験必須セミナー」に参加した際にもらえる冊子です。

「静脈経腸栄養テキストブック」は分厚く、スタート時から読むのは大変そうだったので、最初に「NST専門療法士受験必須セミナーテキスト」の復習と、「過去問題集Ⅰ」を解くことから始めました

さすがにこの2冊では情報量が不足しますので、2冊から学んだ知識の幅を「静脈経腸栄養テキストブック」で勉強して広げていきました。 勉強法に関しては今後もっと詳しい記事にあげていく予定です。

薬剤師がNST専門療法士資格を持つことのメリット

医療現場でのメリット

病院勤務の薬剤師であれば、日々の業務で輸液を見ない日はないはずです。

注射調剤業務での輸液の処方監査はもちろん、病棟業務での栄養評価から輸液栄養の管理など、介入できることは多いです。

具体的には、

  • TPNの処方設計
  • Albをはじめとする栄養指標の活用
  • 輸液の調節を含めた体液コントロール
  • 輸液の調節を含めた電解質コントロール
  • 下痢や便秘の原因検索
  • 下剤の薬剤選択

などのNSTで深めた知識が実際の現場で活かせました。

調剤薬局の薬剤師でも在宅TPNを投与されている患者さんも多くいますので、輸液管理やTPNの処方設計、電解質モニタリングなどNSTが活かされる機会は増えていると思います。

褥瘡などの危険から回避する上でも栄養管理は重要ですね。

在宅以外でも、栄養相談やドラッグ併設の調剤薬局であれば、メイバランスをはじめとする栄養補助食品の相談を受ける機会や、職場に栄養士がいて薬剤師と連携しているところもありますので、活躍できる場はあると思います。

転職におけるメリット

資格取得していることは努力した証拠のひとつですし、第一印象としては良いはずです。

では、実際に給与として反映されるのかが気になるところかと思います。

「薬局薬剤師への転職」と「病院薬剤師への転職」の場合でそれぞれみていきましょう。

薬局薬剤師の転職

一部の調剤薬局では資格手当が支給されるところがあります。

例えば、調剤薬局大手のN本調剤ではNST専門療法士の資格取得者に『5万円/月の手当』が支給されているようです。
ただし、資格手当がでるのはほんの一部の薬局に限られるのが現実です。


なぜなら、現時点で調剤薬局の加算の中に、NSTの資格保有者が条件に含まれるものが残念ながら存在していないからです。

そのため、ほとんどの調剤薬局でNST専門療法士の資格保有による手当がでるとは考えにくいです。

しかし、NSTの資格が意味がないかというと決してそのようなことはありません。
今後、さらに在宅医療の需要が拡大していく中で、輸液・栄養分野の知識は求められる機会が増えることが予想されます。

NST専門療法士としての活動で学んだ知識を使った価値提供ができれば、患者や連携するスタッフからの信頼はもちろん、会社からの評価にもつながると思います。

抗がん剤治療を受ける患者さんに薬局薬剤師が深く関わることで、安全な薬物治療への貢献そして加算算定に繋がっていくのと同様に、輸液・栄養分野も在宅医療分野を中心にさらに広がっていくことに期待したいです。

病院薬剤師の転職

NST加算の要件に「栄養管理に係る所定の研修を修了した常勤薬剤師」の記載があります。

加算という病院への利益に直接つながることを考えるとNSTの資格保有者を必要としている病院であれば直接給与に反映してくれる可能性はあるかもしれません。

ただし、認定専門資格の保有者に資格手当を支給している病院はめったにないのが現状です。

薬局薬剤師の資格手当と同様のことが言えますが、重要なのは資格を持っていることに満足しないことです。

最も重要なのは、資格を取るために学んだ知識を現場にどのように活かしているかです。

資格を活かした具体的な活動を自己PRすることで転職に繋がると思います。

最後に

いかがでしたでしょうか。

栄養の分野は抗がん剤などに比べて新薬や治療法が大きく変わることはあまりありません。

だからこそ、一度しっかりと勉強して身に着ければ現場で長く活用できます。

輸液・栄養に苦手意識や、勉強する機会があまりなかった方もこのブログを機に興味を持っていただけたら嬉しいです。

SNSでも輸液・栄養分野における投稿を数多くしていますので ぜひそちらもチェックしてください

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この記事を書いた人

30代前半の新米パパ薬剤師
手取り月20万もなかった元病院薬剤師が
2度の転職でTotal年収“300万以上UP”
NST専門療法士、外来がん治療認定をはじめ複数の認定専門資格を保有

将来の転職を考える若手薬剤師に
役立つキャリアUP、転職の情報をお届けします

・病院2か所と調剤併設DgSを経験
・Twitterフォロワー数3400以上
・Instagramフォロワー数1360以上
1分図解で楽に学べる医療知識を投稿

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